びわの葉や果実の種子に優れた薬効があることは、 三千年前からインドでお釈迦様が説かれた仏教の教えとともに発達し、伝えられた伝統ある医学です。
お釈迦様の経典のひとつ「大般涅槃経」(だいはつねはんぎょう)の中にもびわの薬効のことが記されており びわの葉を「無憂扇」(むゆうせん)、びわの木を「大薬王樹」(だいやくおうじゅ)と呼んでたたえていました。
「無憂扇」とは、どんな病の憂いも癒す扇のような葉の意味を持ち 「大薬王樹」は、何らかの薬効を持ついろいろな植物のなかで、特に優れている「薬の王様」のような木の意味があります。
インドだけでなく中国でもびわの葉の薬効が知られており、「枇杷葉」と呼ばれ、 精燥救肺湯(せいそうきゅうはいとう)、甘露飲(かんろいん)などの漢方薬にも配合されています。
中国の明の時代(1355~1544)の有名な薬草学の本「本草網目」(ほんぞうこうもく)には、
「肺熱を排降して化痰止咳し、胃熱を清降して止嘔し、煩喝を除く静粛肺胃の薬物」
(肺などの呼吸器の炎症や異常を鎮め、痰や咳を治したり、胃の炎症や異常を鎮めて吐き気や嘔吐を治し 胃腸の不快症状を取り除いたりする肺や胃によく効く薬)と記されております。 また、びわの名称は、その葉の形が楽器の「琵琶」に似ていることから名づけられたとされています。
日本には、仏教医学として千五百年前に伝わったといわれています。
各地でお寺が建立されるときには、必ずびわの木がお寺の周辺に植えられたと言われていて 当時のお坊さん達は、びわの葉を使った治療を檀家や地域の人々に行い 人々の魂を救うとともに体の病をも癒したと言われています。 天平2年(730年)には、聖武天皇のお妃である光明皇后が、貧しい病苦の人々を収容して医療を施す 「悲田院」(ひでんいん)と「施薬院」(せやくいん)を創設し、そこでもびわの葉治療を行っていました。
江戸時代になると「枇杷葉湯」という煎じ薬も出回り、各地でびわの葉を用いた民間療法が行われるようになりました。
やがて、煎じ薬以外に「直接皮膚に貼る」「葉を当ててマッサージする」「葉のエキスで温湿布する」 「お茶やびわ酒にして飲む」「入浴に使う」など種々の治療法が、さまざまな病気に使われるようになり今日に至ります。
~ちょっと迷信~ お寺の周辺には、びわの木は植えてもいいが、 一般家庭では、びわの木を植えるものではないといわれていました。 それは、ビワの葉や果実を求めに病人がくるので 「病人が絶えなくない」「縁起が悪い」ということがいわれていたそうです。 |
『びわの葉療法のいろいろ』
■びわの葉を直接患部に貼る 色の濃い古い葉を使用します。これを患部に当てて貼っておくと体温によりびわの葉が温められ 少しずつ皮膚へ浸透し、痛みや腫れがひきます。 体温で葉がすぐにバリバリになるので、葉の上にラップや油紙を貼っておくとより効果的です。
また、びわの葉のうえに芯まで良く温めたこんにゃくをタオルで包んで置くという温湿布法もあります。
■金地院療法 これは、現在も静岡県にある臨済宗のお寺、金地院(こんちいん)で行われた療法です。
河野大圭師が、お経を書いた「びわの葉をあぶって撫でる」この療法でその当時の結核、皮膚病、小児喘息など難病に苦しむ20万人以上を治したといわれるものです。
「南無阿弥陀仏」と経文を書いて患部に貼ったり、撫でたりしながら祈りをこめることで 病人の心に安らぎと希望を与え、精神的にも大いにプラスになり病気の治癒力を高めていったと考えられています。
そのため河野大圭師は、びわの葉の薬効と同じ位にその人の持つ精神力も大切と考え 「治るという気持ちのない人は、帰す。」というくらいで「怒りの坊主」といわれていました。
この方法は、びわの生葉を2枚用意し、その葉の光沢のあるほうの表面を焦げない程度に火であぶり、 2枚合わせて両手で10回ほどすり合せ、それを熱いうちに1枚ずつ両手で持ち皮膚に密着させ押し揉むように撫でます。初めは腹部から丹田、みぞおち、背中、背骨の上、その両側、肩、腰、尻と行ってから最後に患部を行い、腹部だけで6,7分。特に丹田とみぞおちを念入りに行います。 腹部のあとは、背中から尻まで約10分行います。全体のあとに患部を行うのです。
ただ、一回行うのに葉が10枚必要で手際よくやらなければならないことや葉を温めて皮膚に当てるまでに 葉の有効成分が逃げるといった欠点もあったようです。
■びわの葉湯 枇杷葉湯(びわようとう)ともびわの葉茶のことでびわの葉を煎じて飲む方法です。
江戸時代から夏ばてや食中毒などの予防の保健薬として飲まれていました。 咳、痰きり、気管支炎など呼吸器の弱い人や、整腸作用があるので胃腸の弱い人にも効果があり 腎臓の弱い人には、利尿作用を発揮して尿の出をよくし、むくみを改善します。
全くクセのない味で抵抗なく飲めます。
■びわの葉エキス(びわの葉酒) この方法は、びわの葉が手に入りにくい地方の方や季節にも左右されなくいつでも利用できるので作っておくととても便利です。
1年以上たった枝についていた濃い緑色の厚めの生葉を用意してよく洗い、乾燥させてから2,3センチ幅くらいに細かく刻みます。 たわしで洗う時に葉の裏側にある綿毛をできるだけキレイに取って下さい。濁りの原因になりことがあります。普通の果実酒を作るように消毒済みの広口ビンに入れて焼酎(35度)を注ぎ、冷暗所に置きます。 1.8リットルの焼酎に対し、びわの葉は150gの割合です。 3~4週間したら葉の上下を入れ替えます。入れ替えは、2回くらい行います。 この入れ替えの時に葉と葉の間の空気を抜き、葉が浮いてこないように押さえてください。 夏で3ヶ月、冬で4ヶ月で出来上がりです。
■びわの化粧水 びわの葉を使った化粧水です.
■びわの葉風呂 びわの葉を煮出してその煮出し湯を葉と一緒に風呂に入れます。 お湯がとても柔らかくなり、温泉に入ったように体の芯から温まり、 湯冷めしにくいので冷え性の人には、特にお勧めです。 アトピーや皮膚病にも効果が高く、疲労回復に役立ちます。
■びわの種 びわの葉の1200~1300倍もアミグダリンが含有されていて さまざまな病気の治療や予防に役立つと言われております。 ただ、生のびわの種は、硬く苦くて食べにくいので最近は、焙煎したものが販売されていますので これをコーヒーミルなどで粉にして食べるといいようです。
種は、刺激が強いので1日に2,3個程度にします。
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